青い空に

青い空に飛行船がありました
小さな小さな飛行船でありました
高く高く飛び続けたので、やがては
点の様になってしまい
いつしか飛行船の事など誰も忘れてしまいました

青い空には白い雲が動いていました
ゆっくりゆっくりと時の流れを告げていました
どこまでも旅した雲は
山で木を切る人や、田畑で働く人や
海で魚をとる人を昔から見て来たと言います
街は変わって行っても、人は変わらぬ様だと言います
涼しそうに旅を続けるばかりです
今ではそんな会話を誰ともしなくなりました

僕の腕には傷跡もあります
昔の傷跡はもう薄らいでいるのですが
なかには消えそうもないものがあるのです

時間が自分勝手に流れて行き・・・・・・
昔から空は青かったといいます
僕にはそんな事をいえる自信がありません
空が赤い日や、黄色い日があったからです

あの傷跡がまだ開いたばかりで
赤い血が流れ続けていた頃
それでも空は青かったのだよと
白い雲がささやきます

道端で転んだ私が
腕の傷から滴る血をなめ
それでも青い空を見つめていたじゃないかと
そう語ってくれるのです

人が変わらぬ世の中で
僕の周りの人達が年老いて行きます
少年は今や一人の女を愛する青年となり
母にはシワを刻み込み
誰しも無口になって行きました

語る為の言葉も
世の中の仕組みや
生き方についての考察も変わってしまいました

何も変わらぬ様でいて
何もかも変わってしまったと
取り残された魂が泣き叫びます

青い空に飛行船がありました
誰も乗れなかった飛行船でありました
高く高く飛んで行ってしまいました
忘れようとしても
まだ高く高く飛び続けている事だけが
傷跡のように刻まれているのです

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