歴史

 人の悔恨と怨磋と絶望のうめき声を喰らい、肥え太った残酷な殺人者の目が暗黒の空を見つめる。その甘き妖しき幻影。堕天使を受胎した母なる暗闇がその生の痛みに傷つき、赤黒い古い葡萄酒の様な血が滴り落ちる。そに酔い痴れるは誰ぞ。

 ああ、酔い痴れる者供よ、お前達の母の傷は深い、長い。その深淵に無垢なる記憶が眠っていようと、そを前にして涙せずにはおれまい。生臭い酢の様な酒に酔い痴れずにはおれまい。もうろうとした目で、一筋己に引かれた傷を見つめ続けずにはおれまい。

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