入国管理局の閉鎖性その2

 98年4月初旬、妻の永住ビザがおりたというので仙台出入国管理局まではるばる200kmの道のりを越えて行きました。妻が妊娠8ヶ月に入り、仙台まで行ってビザの変更をするのが困難だったからです。出入国管理局には縄張りがあって、申請する側が自由に事務所を選択するわけには行きません。私は現在福島県南部白河地区にすんでいますが、仕事で度々東京を訪れます。よって東京の出入国管理局(以下入管と略)の方が仕事のついでに行けて便利なのですが、入管が勝手に決めた縄張りのせいでわざわざ仙台まで行かなくてはなりません。

 何故そのような縄張りが必要なのでしょうか?申請側の都合のいい場所で更新の手続きを済ませればいいではありませんか。外国人の登録をコンピューターで一元管理することなどたやすいことです。もうのっけから疑問を感じつつも、永住権を取得しておいた方が何かと便利なので、会社を休み、仙台までしぶしぶ車を走らせることにしました。

 永住権の申請は初めてでした。というか、2度も3度も永住権を取得する外国人も少ないと思います。永住権を取ろうとした理由は、3年毎にビザの更新するのは大変でその上費用も馬鹿にならないからです。ビザの更新のためにいちいち仙台まで行くのは大変ですし、しかも申請と受け取りが同日ではないので2回行かなくてはなりません。なんだかんだいって一回仙台に行くのに2万円はかかります。2回で4万円。それにビザの更新費が4000円。それに書類を整えたりする時間と費用も馬鹿になりません。3年毎5万から6万の出費がかさむことになります。永住権を取得すればそういった必要もなくなると考えたからです。

 仙台の入管につき、室内に入りました。いくつかの窓口がありどこにならんでいいかわかりません。そこで日本人らしく列が出来ている窓口の後ろに並びました。待つこと10分程度、自分の番がやってきました。するとその係りの人は、「あ、これは、あそこの窓口に行って下さい。」と素っ気なく言ったのです。指さす窓口はその事務室の反対側の遠い隅っこにある所です。私はムカッときました。「永住申請受付窓口」とでも書いてあれば、そこで並びます。何にもそういう指示がないから、わざわざ10分以上も待っていたのです。ここまで待たせたなら普通、事務の人が担当の受付窓口まで申請書を渡してくれるくらいの親切さがあってもいいでしょう。冷酷な入管事務員は私に申請書を突っ返し、さも当然そうに「あちらに行って下さい。」といったのでした。50%までボルテージが上がりました。しかし36歳にもなった私は、いや、こんなことではだめだ、落ち着け、どうせこれが最後だ、もう一踏ん張りだ、と自分に言い聞かせ、言われた窓口まで突き進んだのです。

 その窓口には若い男性が座っていました。私が窓口に立っても見向きもしません。人を無視する如き態度です。ボルテージがさらに5%程度上がりました。数秒して、「すみません」と大声でいいました。すると気怠そうに顔を上げるではありませんか。また5%上がりました。「これお願いいたします。」といって、永住許可のあった旨を告げる手紙(申請書)を差し出しました。するとまた下を向いて、「順番待ちカード引いて、呼び出されるまで待って下さい。」といいました。くやしいので私は「どのくらいです?」と聞くと、「順番が来るまでですよ。」といってのけました。・・・あたりまえだ、どあほ!と喉まで出かかりました。俺はな、いったい何分人を待たせるんだと聞いているんだ。15分かかるとか、30分かかるとか言えっちゅうの。人を馬鹿にするような返答をするのはいい加減にしろい、ぷんぷん。と心で思いつつも、まてまて、もうすぐ37歳、これで全ては丸く収まるのだ。奴はまだ青い、相手にするな、と自分に言い聞かせ近くの席に座り待つことにしました。

 30分から40分は待ったでしょうか。自分の前には5〜6人しかいないのに、どうしてこんなに進行が遅いんだ、いったい。もう審査は終わって許可が下りている連中ばかりだろうに。昼寝しながら仕事をしているんか?と、いらいらしてきます。ようやく自分の番号が呼び出されました。

例のお兄ちゃんです。「6000円の印紙買ってありますか。」
私:「いいえ、まだです。」
お兄ちゃん:「じゃぁ、買ってきて下さい。」
私:「どこで買えるんですか。」
お兄ちゃん私をじろっと見る。そして「郵便局に行って買ってきて下さい。」
私:「えっ、郵便局に行って買ってくるのですか?ここ初めてでどこに郵便局あるか
   わかりません。」
お兄ちゃん、待っていたとばかり地図を出して、「事務所を出て、こういって、こう
   いくと郵便局がありますから、買ってきて下さい。」

 おまえなぁ、人を待たす時間がたっぷりあったろう、そういうことは事前にいえっちゅうの!そうすれば、待ってる時間を使って印紙を買って用意しておくことが出来るんじゃ。この時点のボルテージ90%。だいたい東京の入管では同じ事務棟の中で印紙売ってたぞ。なんでわざわざ郵便局まで行かせるのだ。えっ?住民票の写しだって、運転免許の更新だって、みんなみんな同じ所で料金支払うじゃないか。なんで仙台の入管は我々に印紙をわざわざ郵便局まで行って買わせるのだ。これは嫌がらせか?それともこんな不便なサービスが当たり前だと思っているのか?仙台の入管は外国人をなめきっている。それに加え、外国人に何らかの関係を持つ日本人もなめているのだ。全てが説明不足な上に、不便を承知で自分勝手な制度を作る。そして親方日の丸宜しく、威張った態度で、立場の弱い我々に押しつける。こんな態度が許されていいのか!

 お、お、落ち着け、印紙さえ買って提出すれば永住権はもうすぐだ。お前の目的は永住権永住権なんだぞ。ここで喧嘩して永住権取り消されたりしたらどうする。と、またまた自分をなだめ、とぼとぼと郵便局に私は向かいました。しかしこんな悲しいことはありません。たった一つの「永住」というハンコの為に窓口をたらい回しにされ、待たされ、あげく外にまでおっぽり出され、おれは何か悪いことをしたのか?過去に免停になったことあるけど、こんなみじめな思いはしなかったぞ。などど思いながら郵便局に着き、6000千円の印紙を買いました。そのときの郵便局員の対応の親切なこと。郵便局員の普段の対応でさえ、入管職員の対応と比べるととっても親切に感じるのです。私は郵便局の親切さにじーんと来てしまいました。

 ようやく印紙を手に入れ、入管に戻った私はそそくさとそれを窓口に渡しました。すると、「ちゃんと用紙に貼り付けて出して下さい。ピキッ。切れた音ざ、ざけんじゃねぇよ、いったい何枚紙書かせりゃ気が済むんだ。普通はな、窓口で申請出せば、そそくさと処理をして、「はい、お待たせしました。」の一声もいってだ、「すみません、6000円になります。」と切り出す。それで「はい、ありがとうございました。これが受け取りです。」と来るのが筋ってもんじゃねえか。それを、さんざ待たせたあげく、印紙買えだぁそれを貼り付けて出せだぁお前ら何様じゃぁ、金払ってんのは俺の方だぞ!と・・・心で叫びました。頭の中は真っ白。この小生意気な若造の頭を小突いてやろうかという衝動をやっとの事で抑えて、用紙に印紙を貼り、住所氏名を記入し、料金を支払いました。ああ、なんて非効率で無駄の固まりなんだろう。こんな書き込みをさせる用紙すら無駄だ。ビザ発給の料金が高いのは、きっとこの無駄の固まりのせいに違いあるまい。いや待てよ、これが税金でまかなわれているとすれば、税金の無駄遣いじゃないか、ビザの登録などオンラインで管理し、即時発給並びに更新が出来て当然だ。こんだけコンピューター・ネットワークが発達して、あらゆる情報が即時に入手できる今日この頃に何をやっているんだ。入管は無駄飯食いか?ぶつぶつ、ぶつぶつ、と文句は止めどを知りません。

 「はい、ここに永住はんこを押してありますからね、それ以前のビザは全て無効ですよ。いいですね。」と若造はいいました。・・・何いってんだろこいつは、あたりまえじゃねぇか。それに永住がついて他に何のビザが必要なんだ、一体、あん。しかし一般庶民の私はこの国家権力の絶大なる許認可権に逆らう術もありません。永住権だって、ちょっと公安委員会に睨まれ、犯罪をでっち上げられ、強制送還でもされればひとたまりもないでしょう。それに入管には入国審査で再入国を認めない、という伝家の宝刀があります。恐るべしです。

 ちょっと不安になった私は基本的なところを確認したくなり、質問をしました。

私:「すみません、ちょっと教えてもらいたいのですが。」
若造:・・・・(いやな顔をする)。
私:「永住権も一年以上日本を離れると権利がなくなるのですよね。」
若造:「そうです。」
私:「その場合、また永住権を申請できるのですか。」
若造:「それは出来ませんよ。一からやり直しです。」
私:「一からやり直すと言いますと?」
若造:「ビザを一からやり直すということです。」
私:「すると、配偶者等のビサを取り直すと言うことですね。」
若造:「そんなこととは限りませんよ。」
私:?????

こいつ何なんだ、俺に個人的な恨みでもあるのか?それとも何か隠すことでもあるのか?答えになってないじゃないか、それにぶっきらぼうな対応はなんだ。・・・思い直して質問の内容を変ました。

私:「あの、うちのは頻繁に里帰りしますが、何回も帰って大丈夫ですか。」
若造:「日本を出るときは再入国許可を取って下さい。」
   ここで、この若造、腰掛けて別の事務を始める。
私:「頻繁に出国しても大丈夫か心配なんですが。」
若造:「頻繁に出る場合は数次の再入国許可を取るんですよ。日本国外に出るときは、
    再入国許可が必要なんです。」

・・・わかっとるわい、そんなこと。お前は俺の質問を理解しとらんのか。何かの理由があって頻繁に出国したら、怪しまれて、もうあなたは日本に入っちゃだめだよ、なんて永住権を持った人間にはいわないよね、と聞いているんじゃないか。誰も再入国許可の話しをしていないだろうが。それに人が質問をしているのに、何で他の事やり始めるんじゃ、この無礼者心でそう叫び、会話を続けました。

私:「ちがうんですよ語気が荒立つ)、再入国許可を受けて出国したのに、入国の
   際にあなたは頻繁に出国するのでもう入国できませんよ、なんて言われる可能性
   があるのか聞いているんです。
無礼者:「そんなことここではいえませんよ。国外に出るときは、再入国許可を取る。
     ここではその再入国許可を出すんです。必要なとき
また来てください。

 ブチブチブチ完璧に切れた音)。
それはお前が知っているごく幼稚な窓口業務の内容だけではないか。自分の知らない事を聞かれたら誰か他に偉い人に聞くなり、となりの先輩に確認するなり、なんでそんな基礎の基礎出来ないんだ。だいたい事務所も事務所だ。そいつが新米かどうかわからんが(時期的に新米なはずがない)、どういう教育をして窓口に立たせとんじゃ。怒り心頭発し、その日の一日収まりがつきませんでした。家に帰るなり酒を飲み始めたのは言を待ちません。

 こんな無礼で怠慢な所が外国人の窓口になっているのかと思うと、私は恥ずかく思います。日本人の多くが海外に出て、あるときは功績を挙げて国際化に寄与しているのに、肝心の日本に来る外国人の窓口がこのていたらくで、とっても悪い閉鎖的な印象を与えている。日本の入管に行った外国人で、親切にされ感謝している者を私は知りません。大抵いらいらするか、いやな思いをして帰って来ます。外国人を配偶者に持つ日本人にとっても同じです。だいたい入管の職員には国際感覚がありません。人間には尊厳というものがあるます。外国人だって一人一人に尊厳があるのです。たとえ日本語がたどたどしくても、あるいは英語に明るくなくても、自立する精神と道徳心を持った一個の人間なのです。そういう基本的な事を理解していない連中が入管には多すぎます。お前らが外国に行き、同じ態度を取られたとき、どんなに屈辱的な思いをするかよく考えろ、と言いたいです。私はアメリカでソーシャルセキュリティを取得したとき、申請書に書いてある内容がよくわからずとんちんかんな書き込みをしました。そのときでも、窓口の人は笑顔で、ゆっくりと、あるときは紙に書いて説明してくれました。今でもそれには感謝の念が絶えません尊敬すらしています。しかし日本の入管には怒りと自国のそれとして恥ずかしさしか覚えません。日本の入管の職員が外国に行ったら、けちょんけちょんにされればいいと思います。いや、身分を明かしたら確実にそうされるでしょう。自分らの所行思い知るべきです。

 それにしてもあまりにも悲しいことではないでしょうか。確かに入管などは日本人の多くに目のつくところではありません。だから、親方日の丸の旧態然とした慣習が残っています。しかし日本が貿易立国なのは明白で、諸外国との関係を友好的に保たなければならないことくらい常識です。民間レベルにも沢山外国人が入ってきています。私も閑村ながらクラブ活動(西郷英語クラブ)を通じ、国際交流の一助を担っているつもりなのです。私の友人にはアメリカ人の辛口な対日評論家もいれば、東京でペルシャ絨毯を売っているイラン人もいます。立場こそ違え、みんなある部分では日本を愛しているのです。そういう人間に入管が入り口のレベルで悲しい思いをさせていいのでしょうか。民間の国際親善の努力をどうしてくれるのでしょう。また非効率的な運営も問題です。だいたい民間は国際競争の中、しのぎを削り、合理化に努め、明日をも知れない今日の状況の中で必死に生き延びています。そういうご時世に、のうのうと許認可権を振りかざし税金の無駄遣いをしていて許されると思いますか。もっと事務処理を合理化して迅速に、かつサービスを充実させる努力をしろといいたいです。昨今の入管の状況を見ると、サービスのレベルが向上したとはとても思えません。いや、ビザ更新の手続きが1日から2日に増えるなど、後進してさえしています。テレビでは入管が日夜不眠の努力をして違法入国する外国人を追い回す事だけを、さも素晴らしいことのように報道するだけです。これでは公平な報道とはとてもいえません。政府が隠れてスポンサーになっているのかと疑ってしまうほどです。よって多くの国民は実際の入管窓口の実体全然知りません。まぁ、そういう恥部を入管が番組として許可するはずもありませんが、試しに仙台入管に隠しカメラでもおいて一日モニターしてみればどうでしょう。これこそスクープになる私は思います。


戻る