珈琲の豆知識(1998年4月)

最近珈琲の話題が出没しておりますし、先日は私が珈琲をお渡しした方もおりましたので、皆様が珈琲を美味しく飲めるよう、珈琲の豆知識をご紹介いたします。え〜、珈琲故にまめちしき、なんてね。(^^;;

珈琲の木

 茜草科に属する植物。亜熱帯地域に生育し、霜によって枯死するために日本では育成できない。珈琲豆は全て輸入品であり、国産の豆の流通はない。九州地域の愛好家が栽培しているという情報もあるが、それが市場に出回ることはない。珈琲の品種にはアラビカ、ロブスタ、マラゴジーペ等がある。アラビカ種が良質とされ高く取引される為、小売り市場に取引される豆はアラビカ種が主で、普段我々が目にするのはこのアラビカ種の豆である。ロブスタは、インスタント珈琲やブレンド珈琲の増量用として用いられる。マラゴジーペはアラビカ種の変種で、青臭い癖があるなどといわれているが、生産量が希少なため一部で珍重されている。アラビカにも数種の品種があり、特にこれを名乗り他の珈琲と区別することがある(例:ブルボン、トルマリン)が、これは最近の傾向である。

珈琲豆の出来るまで

 珈琲の実は赤い実で、甘酸っぱい味がする。この果実部分を取り除くと、チップと呼ばれる種を包む皮がある。この皮を取り除くと、珈琲の種のみが残る。珈琲豆はこの種の部分をいう。珈琲豆は一つの果実から一個ないし二個取れる。一つの実に一つの種しかできないものは珈琲の木の外側に実る部分で全体の1割から2割程度ある。この豆は楕円形になることから特にピーベリーと呼ばれる。一つの実に二つの種が出来るものは残りの部分で、扁平した楕円形状となる。実の中の豆が向き合う部分が特に扁平する。これをピーベリーと区別して、フラットビーンズと呼ぶことがある。ピーベリーはフラットに比べて酸味の強い豆になる。どちらの豆も中央部分に陥入があり、ここに珈琲豆を保護しているチップが入り込んでいる。このチップは精製によっても取り除く事が出来ない。

 珈琲の実は収穫されて、天日か、水を張った水槽で発酵させ実を柔らかくさせて、果実部分を取り除く。天日で発酵、乾燥を行う方法は伝統的方法で、この製法によって果実を除去した豆をナチュラルと呼ぶ。ナチュラルの品質管理は大変難しく、必ずばらつきが出る。この製法による国は、大量に生産されるブラジルか設備投資が出来ない貧しい国となっている。ブラジルにおいても良質なものは後述するウオッシュドによっている。

 水を張った水槽で発酵させ実を柔らかくさせて、果実部分を取り除く製法をウオッシュドと呼ぶ。製法が豆を洗浄によって取り出すような形になるのでこう呼ばれる。ウオッシュドは豆の品質を均一に保つことが出来る。しかし設備投資に巨額な資金を要する。両者の精製の段階で豆の周りにあるチップは取り除かれるが、完全には取り除かれていない。

 珈琲豆市場はニューヨーク市場に大きく影響される。ニューヨーク市場では、ウオッシュドの豆を上質とし、ナチュラルを下にランクしている。品質が安定しているコロンビア産のウオッシュドが高く評価されており、コロンビア及びその周辺国のウオッシュドによる豆を特にコロンビア・マイルドとして最上位にランクしている。次に他の国々で生産されるウオッシュドがアザーマイルドとして取引され、ナチュラルが最後にランクされる。豆の品質は形状がそろっていること、小石や木片、虫の食った豆や異常発酵してしまった豆が混入していないことなどの条件によってランク付けされる。よって特定の産地や味などによって品質評定されるものではない。例外はジャマイカ島の標高の高い地域でのみ生産されるブルーマウンテンと称される豆である。これは英国王室御用達という名声ばかり高くなったもので、その取引金額は品質と比較してはあまりにも突出している。

珈琲の出来るまで

 珈琲が出来るまでは、この豆の加工の工程をたどることになる。珈琲の加工は以下の工程による。

(エイジング)−(ハンドピック)−焙煎−粉砕−抽出

 因みにこれらの加工は消費国で行われる。最近はエスプレッソ用の焙煎された豆を輸入する向きもあるが、珈琲は生鮮品といってよく、焙煎されてからは常温で2週間で劣化する。よって焙煎されてからなるべく早く豆を使った方が良く。そういう観点から、国内で焙煎され焙煎日の明記や明確な流通経路を持っている豆を使うことが推奨される。

エイジング、ハンドピック

 これらの過程が括弧書きされているのは、大抵の珈琲メーカーでは省かれているからである。一部の品質を重んじる焙煎業者あるいは自家焙煎の珈琲店のみが実施している。

 珈琲の豆は精製されて間もないものは、珈琲豆の含んでいる水分にばらつきがある。これを焙煎すると焙煎のまちまちな珈琲豆となってしまい味が安定しない。そこで豆を半年から1年風通しの良い冷暗所に保存する。すると余分な水分が抜けて、豆の品質が一定となる。マンデリンなどは3年のエイジングに耐えるといわれているが、あまり長いエイジングは豆の力を落とすことになる。

 輸入されてくる豆には必ず飲んで美味しくない、欠点豆といわれるものや、割れた豆、異物などが混入している。石などの異物は自動選別できるが、虫に食われた豆や異常発酵した豆、あるいは割れ豆等は目視による選別しか方法がない。これを取り除く作業をハンドピックという。エイジングされた豆、そしてハンドピックされた豆が当然上質な豆であるということは、言を待たない。どちらも手間暇がかかり製品コストをあげる工程なので、メーカーはやりたがらない。

焙煎

 珈琲豆を加熱して豆の化学成分を変成させ、また琥珀色に着色させ飲用に適した味に加工する工程。この工程によって珈琲の味は8割方決定してしまう。焙煎は強力な火力で短時間にかつ均一に行うことが望ましい。長時間の焙煎は味を劣化させるし、均一でない焙煎は味を不安定なものにする。焙煎時間は15分から20分。焙煎後は素早く冷却し、焙煎の進行を止めかつ、送風によって煙を吹き飛ばし、煙の臭いが豆に付着することを防ぐと共にチップを豆から取り除く。

焙煎の度合いは

「ライト−シナモン−ミディアム−ハイーシティ−フルシティ−フレンチ−イタリアン」の8段階有り、イタリアンに近くなればなるほど焙煎の度合いは上がる。焙煎の度合いが低いものは酸味の強い傾向にあり、焙煎の高いものは苦みの強い傾向にある。珈琲独特の苦み、コク、甘みを引き出すためにはフルシティ程度の高い焙煎が必要となる。但し抽出液の成分の濃さという観点からすると、焙煎の低い方が濃く、高い方が薄い。焙煎の高い珈琲はいわゆる炭汁に近くなっているわけで、悪戯に焙煎が高ければいいものではない。因みに眠気防止のためにわざとフレンチローストなどの苦い珈琲を飲む人がいるが、これは効果がない。眠気防止には焙煎の低い苦くない珈琲を多めに飲んだ方が効果的である。

 普通珈琲屋さんで売っている豆は、ミディアムかハイと呼ばれる程度の焙煎度合いのものである。珈琲の味は焙煎によって味が全然異なるので、自家焙煎などをして一度その違いを試して見ることをお勧めする。我々がいかに単一な味を押しつけられているかがわかる。

粉砕

 珈琲を抽出する前に、抽出する方法に合わせ豆を粉砕する工程。出来ればこの時に豆の陥入部にあったチップを取り除く。また粉砕時に発生する微粉を取り除く。この工程は珈琲の味に直接影響することはないが、処理が不適切に行われた場合、珈琲の味を著しく損なう事になるので、他の工程同様の注意が必要である。

 粉砕された豆は三角形に均一な大きさになっていることが理想的とされる。この理想的な粉砕をする粉砕機は存在不可能であるが、豆を切断するような機構を持つカッティングミルというものが最上とされている。当然高額であり、家庭用に手の出る品物ではない。使いものになるカット機構を持つ家庭用(あるいは小規模な喫茶店用)のミルとして、ナイスカットミル(カリタ)というものが2万5千円で売られている。あるいは手動のミルで粉砕した方がいい。電動の安いミルは微粉を沢山発生させ、さらに粉砕時の高熱によって珈琲の品質を劣化させる。

 粉砕と抽出は相互に密接な関係がある。一般に、粉砕度合いが細かいほど抽出時間を短くする。珈琲の標準的な抽出では、初めの30秒から3分までにいい成分が抽出され、それ以降では悪い成分が抽出される。一般に粉砕された豆が細かいほど、悪い成分が抽出され始める時間も短い。微粉になると1分以内に抽出を完了させなくてはならないので、エスプレッソなどに用いられるのみである。よって通常は微粉を出さないミルが望ましい。あるいは粉砕後メッシュなどを通して微粉を取り除くことが望ましい。同じくチップも珈琲にえぐ味を加えるだけなので、取り除くことが望ましい。

 微粉から始まり荒挽きまでの順を抽出方法で並べると以下のようになる。

イブリック、エスプレッソ、水だし(以上微粉)、ネル(布)ドリップ、ペーパードリップ、サイフォン、パーコレータ。

抽出

 粉砕した豆にお湯を通すことによって、珈琲の成分を抽出し飲用に供す工程。珈琲の味の2割方がこの工程によって決まる。主な抽出方法には、イブリック、エスプレッソ、水だし、ネルドリップ、ペーパードリップ、サイフォン、パーコレータ、オートドリップマシン等がある。現在の日本ではペーパードリップ(フランスが発祥の地)が広く普及している。サイフォン(イギリスが発祥の地)はそのユニークな抽出方法によって喫茶店などで用いられている。一番美味しい抽出法は、日本では30人分くらいをネルドリップでいっぺんに作るやり方であるといわれている。イタリアに行くと、エスプレッソが世界一だといわれている。すなわち国によって違う。

 抽出条件には、水質、湯温、抽出時間などがある。日本の水質は軟質で、珈琲には適している。珈琲はミネラル分を多く含んだ硬質を嫌い、また鉄分を嫌う。ヨーロッパなどの硬水質の国はその為、焙煎を高くし(珈琲の中身を薄くする行為に等しい)、エスプレッソなどの抽出時間の短い抽出法を開発した。日本では軟質の恩恵を受け、低い焙煎の酸味と丸味のある珈琲の味を楽しむことが出来る。またそれを充分に引き出せる抽出法であるドリップが広く普及した。珈琲はまた鉄分を嫌うので、お茶に用いるような鉄製のやかんは用いてはいけない。ステンレス製かホーロー引きのポットが望ましい。

 湯温は高いほど苦みが強く抽出され、低くなると酸味が引き立つように抽出される。しかし抽出温度の下限は80度程度で、それより低い場合は充分な抽出がなされない。抽出時間は最大で3分程度で終了されなければならない。それ以上時間をかけると悪い成分が抽出される。よってアメリカンタイプの珈琲を作る場合、必要以上にお湯を使うのではなく、適正量のお湯を用い適正時間で抽出を終了させ、それにお湯をつぎたして薄める方がはるかにおいしい。水だし珈琲だけは6〜8時間ほど抽出時間がかかる。

保存(のり流)

 珈琲は生鮮品なので2週間以内に使いきることが望ましい。珈琲の劣化の条件は酸素と水分である。珈琲豆は水分を吸いやすく、水分によって成分が変化し品質が劣化する。また酸素による酸化によって品質が劣化する。よって水分から遮断し、酸化が促進されない環境で保存するのが最良の手段である。真空状態で酸化が進まない低温環境での保存が望まれる。家庭でその実現は不可能なので、きつく包装してなるべく空気に触れさせないようにして、これを冷凍庫に入れておくのがよい。こうしておくと1カ月程度は新鮮に保てる。大量に購入した際はこの方式で保存し、1週間で使いきる程度の量を取り出し、それを密閉できる缶で保存しながら使用するといい。その際も直接缶に入れるのではなく、ビニール袋に入れて空気に触れさせずきつく包装しておくこと。挽いた豆はその日のうちに使いきることが鉄則。挽きたてが一番美味しい。しかしミルがないという人は、なるべく短期間で使いきれる量をこまめに購入し、その保存も絶対に常温では行わず、冷凍庫に入れておくこと。

のり流珈琲を美味しく入れるコツ(ペーパードリップ編)

 焙煎した当日の豆は使わない。必ず一日寝かす。焙煎したての豆は味が暴れる。

 珈琲豆をチェックし、色の薄い豆(死豆)、穴のあいた豆(虫食い豆)、表面が粗くざらついた豆(発酵豆)、欠けている豆、異物等を取り除く。

 挽いた後は、なるべくチップや微粉を取り除く。

 ちょっと美味しく飲みたいと思ったとき、あるいは古めの豆は使用する分量を多くし、その分粉砕を粗めにして、多い豆でかつ短い時間で抽出させる。古めの豆は悪い成分が出てくる時間が早い。

 焙煎の高い豆は、ペーパードリップで一度わかしたお湯を別のポットにいれて(90度になる)さまして煎れる。すると苦みが押さえられ、コクが出てくる。

 普通の珈琲には沸騰したてのお湯は用いず、少し落ちつかせる(95度)。沸騰したてのお湯で煎れると味が暴れる。

 使う器具とカップは湯煎する。例えばペーパードリップの場合、サーバーはもちろん、紙もドリッパーと一緒に湯煎する。湯煎後に挽いた豆を入れ、匙などで上面を平らにする。

 ドリップの場合、蒸らしのとき膨らまない豆はおいしくない。よってそういう豆は今後使わない。蒸らしはまんべんなく少量のお湯で豆に注ぐ。時間は一分ほど。膨らまない豆は10〜15秒ほど早く蒸らしを切り上げる。

 蒸らしの際、サーバーにお湯が落ちてはいけないといわれているが、かまわない。あまり落ちたら捨てる。

 ペーパードリップを行う際は、蒸らしの後、珈琲の中心に細いお湯で充分に注ぐ。するとお湯はドリッパーの中で、中心より周囲に向けて回転するように循環し、まんべんなく抽出が行われる。その後に浮いている粉を押し込むように細いお湯で周囲に回し注ぐ。この作業を合計3回程度行う。

 あまりに時間がかかってしまった場合や古い豆や膨らまない豆は2回で終了する。抽出量が足らなかった場合でも、絶対にドリッパーへの継ぎ足しはやらない。直接珈琲にお湯を加える。

 ペーパードリップで多めにお湯をついでしまった時は、全てが落ちるのを待つのではなく、途中でドリッパーを離して強制的に抽出を中断する。美味しい成分はすでに抽出されているので問題はない。長すぎる抽出時間の方が問題。

追伸:知識的なところは、暗記しているものに頼っています。白河に文献を持ってきていないので確認できませんでした。間違いはないと思いますが、一部古くなっているものもあるかと思います。他の部分は私の修行と経験によります。もしご指摘事項がありましたら、ご遠慮なくご指摘いただきたいと思います。より良い珈琲の為に。


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