入国管理局の閉鎖性(1994年4月)
 高川 憲之

 私は3年前にスイス人と国際結婚をしました。現在日本に住んでいます。私が外国人と結婚し日本で生活を始めたとたんに入国管理局とのつきあいが始まりました。私からみた入国管理局は、まるで交通違反者を懲罰する交通裁判所の様でした。出頭者は煩雑な書類を厳格に要求され、少しでも不備があると門前払いとなる。そして窓口を転々とまわされたあげく、採決が下され許可(判決)がおりる。それに対して不服は許されず、罰金に等しい申請料を支払い、ようやく解放されるといったものです。私はこのような入国管理局に疑問を感じました。しかし、入国管理局は外国人を相手にする役所のため、私のような日本人以外はほとんど縁のないところです。従って多くの日本人にはどうなっているかなど知る由もないところです。

 私は多くの人に外国人が入国管理局でどう扱われているかを知ってもらいたいと思います。それは入国管理局が外国人に対して大変悪い印象を与えているからです。ひいては日本は閉鎖的であるとの批判を招くことになるからです。そこで国際結婚からみた「入国管理局の閉鎖性」について考えてみました。私はこの問題は国際化する日本社会にとって、重要な社会的問題であり、規制緩和に関する政治課題でもあると考えています。

 国際結婚をして日本で生活する場合、まず配偶者の婚姻ビザ申請のため入国管理局にお世話になります。結婚した二人は生涯を共にしようと決意しているわけですが新婚の場合、驚くことに6カ月か1年のビザしか許可されません。そのために用意する書類は、申請書、婚姻を証明する書類、結婚までのいきさつを述べた書類、二人で写った写真2場面、日本人配偶者の戸籍謄本、日本人配偶者の住民登録証、源泉徴収票あるいは納税証明書、在職証明書あるいは確定申告書の写し等に及びます。国際結婚はお互いの習慣も違い、破局を迎えるケースもあると聞きますし、偽装結婚の例もあるそうです。従って初回の申請時に多少煩雑になっても、両者が日本で結婚生活を送れると認められるに足りる書類を提出することには理解できます。また、6カ月か1年後に更新を行わなければならないことも我慢すべきことなのでしょう。

 ところが次に更新しても、結婚後3年間までは1年以上のビザが許可されません。これは入国管理局の内部規定によるとのことです。しかもこの更新に要する書類は申請書、日本人配偶者の戸籍謄本、日本人配偶者の住民登録証、源泉徴収票あるいは納税証明書、在職証明書あるいは確定申告書の写し等に及びます。またこれにかかる費用は、更新料や再入国許可(これがなく故国に里帰りするとビザが無効となる)の申請料を合わせますと約一万円の出費になります。

 婚姻ビザの有効期間は最長で3年間です。4回目のビザ更新からは3年間のビザがもらえるチャンスが与えられます。しかしこれは入国管理局の裁量いかんなのです。また例え3年間のビザをもらえても婚姻ビザを更新する限り、3年毎にこの煩雑な更新作業を繰り返さなければなりません。

 なぜ毎年婚姻ビザを更新しなければならないのでしょうか。あるいは生涯3年毎の更新です。なぜ国際結婚に自動車の運転免許証のような許可が必要なのでしょうか。さらに更新の為に要する書類は5種類にも及びます。これも一部は市役所に出向かなければ取得できないものであり、しかも有料です。自動車運転免許証の場合でもこんな手間はかかりませんし、優良ドライバーであれば5年間の有効期間が与えられるのです。またこれらの規制は、入国管理局の内部規約によるものと聞きます。どうして入国管理局は自分たちで勝手に決まりを作って国際結婚をする者を規制で縛り付けようとするのでしょうか。しかも外国人にはこれに不服を訴える道が閉ざされています。国際結婚した外国人配偶者は、外国人故にこのように官僚が勝手に作った規制の犠牲者となっているのです。また日本人配偶者もその犠牲者の一人となります。

 私はスイス人の女性と国際結婚をしましたが、入国管理局に出向く度に自分が国際結婚という犯罪を犯したような気分にさせられます。なぜならこのような厳しい規制のため、毎年あちこちを駆け回り、会社を休んで書類をかき集め、入国管理局を訪れ、うんざりするほど待たされた上に、駐車違反に匹敵する申請料等を支払って、やっと妻の婚姻ビザの更新許可をもらうことが出来るからです。日本語に不自由しない日本人がこのように苦労するのですから、日本語が不自由な外国人にとって、ビザ申請手続きがいかに苦痛に満ちたものであるかが伺い知れます。本当にこんな規制が必要なのでしょうか。社会的に弱い立場にある人間たちを苦しめる身勝手な規制が横行していいものなのでしょうか。入国管理局はあまりにも閉鎖的ではないでしょうか。

 日本の出入国管理法はその施行規則を含めて外国人に対して日本への門戸を非常に狭くしています。基本的には外国人を受け入れず、限られた一部の外国人のみを一時的に受け入れようとする姿勢です。明治時代に欧米から技術者を受け入れ、技術を盗みとっては外国人技術者を追放していった、明治政府の閉鎖的な外国人政策を継承しているかのようです。しかも入国管理局はそれに輪をかけ内部規約などを作り上げて、外国人を規制します。国際結婚をする者も基本的には歓迎されないのです。まるで偽装結婚をする犯罪者のように疑われ、毎年入国管理局に出頭するよう義務づけられるのです。これは国際化が叫ばれ国境を越えた友愛を築き上げようとする国際社会の努力に反する行為です。厳しく規制され、まるで犯罪者のように扱われる外国人配偶者が日本に失望し、また同じく同胞も日本を去って行くという悲劇さえ生んでいます。日本に来た外国人がもう2度と日本を訪れたくないといい。日本を離れた日本人が2度と日本に戻りたくないというのは悲しいことです。それを官僚がその閉鎖性と規制によって作り出しているとしたら、もっとやりきれないと思うのです。

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