コーヒーミル製粉によるそば


 珈琲を粉砕する場合は、エスプレッソなどの微粉を用いる場合を除いて、均一な粒状の粉を作る必要がある。この時、電動のミルであると高速回転による粉砕時の発熱で、熱変性を起こし、風味を損ねるという問題点がある。しかしながら手動のコーヒーミルによる粉砕は手間がかかる事、手動といっても必ずしも均一な粒状の粉をえられる訳ではないことなどによって、多くの業務店では電動ミルが使われているし、よく設計された電動ミルを用いると、かえって手動ミルの粉砕より良質な粉を得られる事もある。

 電動ミルを選ぶコツは、なるべくすり潰す構造ではなく豆をカッティングするような機構を有するものであること、粉砕時に発熱を抑える工夫が施されていることなどがあげられる。良いミルで粉砕された粉の形状は、拡大すると三角錐の近い形状となっている。

 そばの製粉場面では、石臼を用いることによって品質的に高い粉を得られると言われている。石臼での製粉では、カッティング的な要素はなく、すり潰す作用による製粉となる。石臼で製粉された粉は拡大すると、針状によられたような形状を呈する。このすり潰し作用は被粉砕物に過度の摩擦熱を加える為、通常は極めて低速な回転で、ゆっくり粉砕し、熱変性を防止することに注意が払われる。一般に一定回転の粉砕が一定の粒度を保つとされている。しかし、コーヒー豆と違い、蕎麦の抜き実は甘皮部分もあり、粘土、硬度が均一ではない。よって、蕎麦を石臼製粉しても、全ての部分が一定に粉砕される事はない。一般には蕎麦の実の中心部分が細かくなり、皮の部分に行くに連れて粗くなる。

 蕎麦の製麺工程において、麺帯を形成するに必要な要素は、加水時にそば粉から溶出されるアルブミンタンパク質の粘性にある。この粘性は十分な水分によって強く得られる。蕎麦の製麺工程で、水回しと呼ばれる、加水、攪拌工程が重要であるといわれる理由がそこにある。そば粉に加水すると、このアルブミンが溶出する訳であるが、溶出に当たっては、当然粒子の表面積が大きい程有利となる。また、単位重量当たりの表面積が大きければ大きい程、粘着力が得られる事になり、これはそば粉の粒度が小さければ小さい程、粘性を得られ、麺帯を形成しやすい事につながる。理想的に言えば、そば粉の粒子が均一に細かく、かつ形状が球形に近ければ、重量当たり最大の表面積を得られ、打ちやすい粉が得られる事になる。因みに粉が粗い場合、表面積が小さくなり、十分な粘性が得られない。この場合、試みなくてはならないのが、通常以上の加水をしてみる事である。なぜなら、そば粉から溶出するアルブミンの粘土は、加水度が高くなるに連れて強くなる関係にあるからである。粘性が高くなれば、接着表面積が小さくても、カバーされる可能性が高い。もし、これにも限界がある場合は、熱湯を加え、そば粉に含まれる澱粉質をアルファ化させて粘性を得るなどを試さなくてはならなくなる。熱湯を加えて製麺した場合、一般に香りが落ちると言われている。また、茹で時間も短くするような配慮が必要となる。

 珈琲の抽出と、蕎麦の製麺にはある類似性がある。それは、実を粉砕し、それを加水するという工程が含まれるということであり、抽出成分が製品の品質に重要な影響を及ぼすという点である。ということは、粉砕機器の性能あるいは設定が品質に重要な影響を及ぼす事になる。求まれる性能は、

1.粉砕工程で発熱が少なく、熱変性を起こし難いもの。
2.一定の粒度で粉砕できるもの。
3.粒子の形状が球形により近いもの。

などが考えられる。これは、蕎麦であれ、珈琲であれ共通の事項であろう。蕎麦と珈琲で異なる点は、粉砕の粒度である。蕎麦に求まれる粒度は、珈琲の粉砕基準で見たところの、微粉といわれる極めて細かいものである。メッシュ#60を通過する細かさで、この粒度の粉を珈琲で粉砕した場合、エスプレッソあるいはイブリックの抽出に用いるしかないものとなる。ドリップなどで用いる粉は、2〜3ミリの大きさになるものもあり、蕎麦においては製麺出来ない程の粗さとなる。

 この様に見ると、コーヒーミルによる蕎麦製粉の転用は可能であるが、エスプレッソ用のなどの微粉の製粉が出来、かつ発熱の少ないミルである事が求まれる。今回使用したミルは、今まで使用していたミルが故障したために新たに購入した、ブラウン・カフェセレクトKMM30というもので、エスプレッソ用の粉の粉砕に適し、発熱の影響もあまりないという、友人のコーヒー豆屋推薦のコーヒーミルである。

 実際の製粉並びに、それを用いた蕎麦打ちの結果などを写真と共に紹介したい。
 下の写真がブラウン・カフェセレクトKMM30とその箱


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