平成20年臨時国会・参議院法務委員会
複国籍容認に関する質疑抜粋
自民党 丸山和也議員


出典
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0103/main.html
2008.11.27

【参考人に対する複国籍等に関する質問】

○丸山和也君 自民党の丸山ですけれども、よろしくお願いします。
 お二方に二、三点、同じ質問を順次さしていただきたいと思いますけど、若干やや大まかな、大まかというか、大局的な観点からどういうお考えを持っておられるかということをひとつお聞きしたいんですけれども。
 たしか私の記憶では、福沢諭吉が明治維新のころに封建制度は親の敵であるとたしか言って、有名な言葉、有名かどうか知りませんけど、私の記憶の中にあるんですけど、やはり日本のいわゆる、まあ今封建時代じゃないはずなんですけれども、いわゆる戸籍制度、戦前は家族制度というのがありましたから、そこに、いわゆる戸籍制度と国籍制度というのはこれ非常にリンクしている問題だと思うんですけれども、いわゆる戸籍万能主義というか、それと婚姻万能主義というか、これの結び付いたところで、実際この国籍法の問題にしたりあるいは他の民法との関連の中で恐らく最高裁が言うような法の下の平等が発生してきていると思われるんですが。
 そこでお聞きしたいんですけれども、そもそもいわゆる日本の言う戸籍というような制度が、私も若干は勉強しているんですが余り専門家じゃないので、世界的に見て非常にたぐいまれな制度なのか。韓国なんかはあると思うんですけれども、外国で戸籍というのは余り、私もアメリカにおりましたけど、そういう発想がないものですからお聞きしたいんですけれども、戸籍というのは、世界の中で日本的な戸籍というのはどのように位置付けされるのかということを一点お聞きしたいのと、それからいわゆる二重国籍の問題なんですけれども、例えば日本人が、最近よくあるんです、日本人女性が外国人男性と結婚すると、当然といいますか、例えばヨーロッパならヨーロッパの国籍を取得しますね。すると、日本の国籍法にすると国籍の選択という義務があるんですけれども、要するに二重国籍を原則として日本の国籍法は認めないんですけれども、これについて、例えば二重国籍を許容する国もいっぱいあるんですけど、この点についてどのようなお考えをお持ちなのかと。あるいは二重国籍を、例えば日本人女性が外国人と結婚した、しかし、日本にいる父親、母親が老後になって介護の必要が出てきた、すると、日本に帰るときは今度外国人として帰らなきゃならないとか、いろんな問題がたくさん出ているんですね。だから、二重国籍問題というのも避けて通れない問題だと思うんですよ。こういう点についてどういうお考えかということが第二点と。
 第三点として、今回の六月の最高裁判決というのは、この問題だけじゃなく、例えば嫡出子と非嫡出子の違いによる、やっぱり親の地位というか位置付けによって子が不当に差別をされることは法の下の平等に反するというところがやっぱり僕は主眼だと思うんですね。そうすると、民法九百条とかの問題なんかも避けて通れない近々の問題になると思うんですけれども、こういう点についてどのようにお考えか、この判決の効果といいますか、思想的な流れとしてどのようにお考えかということを簡潔にお聞きできたらと思っています。
○委員長(澤雄二君) すべての質問を両参考人でよろしいですね。
○丸山和也君 はい。
○委員長(澤雄二君) じゃ、今度は遠山参考人にお願いいたします。
○参考人(遠山信一郎君) まず、戸籍については、先生以上の知見を私持っておりませんので、ちょっとお答えができません。
 二重国籍の問題は、実は今回の改正が第一楽章であれば、第二楽章の問題かなというふうに思っています。たしか衆議院の附帯決議にも後ろの方にそのような重国籍のことが書いてありました。
 私の認識としては、例えばノーベル賞をアメリカに国籍を取った人が出たときに、実は日本人だったというときに日本の誇りと言いづらいとか、そういうふうなこともありますので、二重国籍ということは今まではどちらかというと忌み嫌われたという風潮があるかなと思っていますけれども、これからはそれも揺らいでいくのではないかというふうな感覚を持っております。
 先生がおっしゃっていたのは非嫡差別の問題なんですが、これも実は第二楽章だと思っておりまして、今回は、個別の判例のテーマとしてはこの国籍の問題でございました。でも、そのセンスの、最高裁の物の考え方の本流にやっぱり非嫡差別はいかぬというのがあると思います。ですから、これはその流れからすると、親の都合で婚外子になったということで不当な不利益を与えるのは、これはもう憲法違反であるという流れにあるのかなというのが私の大局的な感覚です。
 以上です。
○参考人(奥田安弘君) 丸山先生の御質問に対して私の答えが少しずれていたりしますと、そのときは御指摘いただきたいと思いますが、まず戸籍が万能かどうかという、これ質問の中に入っていませんでしたが、戸籍はあくまで公証力がある、公に証明するという力があるだけでありまして、それは実際に例えば後で裁判で覆るというようなことはあるわけです。ですから、万能という言い方は少し違うかなと思っております。
 その上で、世界の中での我が国の戸籍制度ということですが、家族登録制度というふうに言い換えますと、それはどのような国、どこの国でもあるわけです。出生、婚姻、離婚、死亡、そういうものを全部一つにまとめてあるという意味では、日本の戸籍制度というのはかなり優れていると思っております。例えばアメリカなどでしたら、出生届、婚姻届、死亡届というものが全部ばらばらでありまして、それを一つにまとめるものがない、ですから丸山先生が向こうでは戸籍を見なかったと、こういうようなことだろうと思います。
 家族登録というのは、しかしどこにも、どこの国でもあるわけでして、それは登録されたことによって、じゃ子供が国籍を取るのかというと、それは逆でありますね。日本人である、国籍法によって日本人であるということが確定されて初めて戸籍ができると。戸籍あって国籍じゃなくて、国籍があるから戸籍だという、この順番を考えますと、そういうことでいいますとほかの国と何ら違いはない、共通しているものだと思います。
 次に二重国籍の問題ですが、私が最初の説明で少し申し上げましたように、今回届出によって日本国籍を取得した場合、外国国籍を失う危険というのが非常に多くあります。ですから、私は裁判ではそれは望ましくないんじゃないかということを主張しましたが、しかし最高裁判決が出て、届出は残しておくべきだと、こう判断されたわけですから、私がそれに従って考えますと、そういう自分の意思による国籍取得によって元の国籍を失う、これは実は自動的でございまして、例えば日本人がアメリカに帰化して、それをしかし日本の戸籍とかに届け出なければ日本国籍をあたかも失ってないかのように見えますが、実は国籍法では既にもう失ったことになっているわけです。私は、そういう意味で、むしろ仮装認知より仮装二重国籍の方が問題かなと思っています。
 今回、私が言いたかったのは、届出によって日本国籍を取得しましたということを元の国籍国に通知するということ、これが非常に重要だろうと思います。本当はもう元の国籍を失っているのに、あたかも失っていないかのようにパスポートもそのまま持っているというようなことは望ましくないだろうということでありまして、この辺が丸山先生の御質問とかみ合っているかどうかというのはちょっと私分かりませんが、私の方が言いたかったのはそういうことであります。
 二重国籍一般の問題については、今コメントを差し控えさせていただきたいと思います。
 三番目の非嫡出子差別の問題ですが、子供にとってどうしようもないことということがすべて違憲だということにはもちろんなりません。社会的身分による差別は確かに憲法十四条で禁止されていますが、しかし、そこには合理性が問題となるわけです。婚内子と婚外子が全く同じかといいますと、それは同じではありません。それは嫡出子、非嫡出子という用語、言葉を廃止した国においても、やはり差別はないけど区別は残っているわけです。母が産んだ子供はその母の夫の子であるという推定、これはそういう嫡出、非嫡出という用語を廃止した国でも残っておりまして、その辺の区別はやはり残っているわけであります。
 したがって、今回の違憲判決の射程距離、射程範囲ということですが、これはあくまで国籍についてこれは不合理であったという判断をしたわけでありまして、相続分差別の方はまた合理性は別個に判断すべきことだということであります。つまり、問題によってやはり分けて考えていかなければならないということが申し上げたかったわけであります。
 以上です。

【戦前は父が認知したら国籍が付与されていたではないか!】

○丸山和也君 大体聞こうと思ったことをもうおっしゃったんですけれども、勉強のために少しお聞きしたいんですけれども、国籍法、現在の国籍法ですね、昭和二十五年制定ですか、戦前の国籍法においては、国籍の取得というのは、国籍取得の届出は必要だったんでしょうか、それは必要なかったんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 認知の場合は必要でありませんでした。日本人の男子が外国人の女性との間に生まれた子供をおれが認知すると言ったら、認知した瞬間に日本人になる、届出も要らないという、そういう制度でございました。
○丸山和也君 逆に言うと、ドイツなんかもそうじゃないかと思うんですけれども、短絡的に考えると、その方がむしろ時代の流れかなと思ったりもしないこともないんですよ。すると、わざわざ法改正をして、例えば戦後の体制、個人の自由を尊重した憲法下でこういう法律が逆に強化されて、それで今またいろいろ問題が起こっているんですけれども、これはどういう意図でというかいきさつで、あえてこの国籍法で認知のほかに国籍取得の届出を要求したんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 実質的には、認知をしただけで日本人になるというと、日本人になる方は子供でございます。子供には外国国籍がある場合が多いわけで、それを子供の意思にかかわらず、あるとき認知するということを言ったら自動的にその人が二重国籍になったりとか、いろんなことが起こるわけですね。それでいいのかという問題があります。
 それで、きちっと届出をさせて、そこで身分関係をきちっと安定をさせて、そしてやるというのが正しいという、そういう立法政策だろうと思います。

【複国籍の容認に関係する質疑】

○丸山和也君 そこで、どうしても二重国籍問題というのが出てくるんだと思うんですね。それで、現在の国籍法においても基本的には二重国籍は望ましくないという発想ですよね。それで、先ほど局長の答弁の中で、例えば日本人男性がフィリピン人の女性との間に子供をもうけたと、そして生後認知をしたケースだとしまして、既にもう子供がフィリピン国籍を取っているとして、すると、今回の改正で日本国籍を取ったときに、結果的にはまあ、その後どうなるは別にして、その時点では二重国籍になるわけですよね。
 それで、一方、日本の国籍を与えても、日本の法務当局からはフィリピンに対して、いや、日本国籍を取りましたからおたくの方でしかるべき手続を取ってくださいという通知もしないし、今後もする意向はない、また、そういうことを一々やらないのが国際的な各国の流れだと、私もそう思うんですけれども、そうなると、ある意味じゃ特定の場合にはだから二重国籍者をどんどん今回の国籍法の改正によって増やすことにもなるわけですよね。
 それと、一方、日本の国籍法は基本的に私が読む限り余り二重国籍というのは前提にしていないと。それから、国籍の選択ですか、何条でしたかね、十四条ですか、こういうことがあって、どちらかの国籍を選ばせるという思想のようになっていると思うんですけれども。
 こうなると、二重国籍あるいは三重国籍、四重国籍もあるかもしれませんけれども、重国籍に対する考え方についても、基本的に考え方自身をどのようにするかということを考えるときが来ているんじゃないかと思うんですけれども、これについて、まず法務大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(森英介君) そうですね、現状では今委員のお話にもありましたとおり日本では国籍唯一ということが基本で、これは何でそうなっているかということを私なりに考えると、やっぱり白眞勲委員のように重国籍になる可能性のあった方の場合、やっぱりその両国の利害が対立したときなんかに非常に困ったことになっちゃうというふうに思うわけです。そんなことで、日本では恐らく国籍唯一ということが基本になっていると思いますけれども、諸外国では重国籍を認めている国も少なからずあるわけでございまして、これをどうするかというのは、やっぱりこれから国の在り方も含めて大きな議論になると思いますけれども。
 私は、個人的には、別に特に国籍唯一を基本として特に問題はないと思いますし、また、今回確かに重国籍が増える、可能性としては重国籍が増える方向に行くと思いますけれども、それも二十歳まで、二十歳以下の場合には二十歳のときに自分で決めると、それで、それ以上であればその二重になった時点から二年後に決めるということで、かなり自己申告的な感じもありますけれども、私は現状においてさしたる不都合はないんじゃないかなというふうに思っております。
○丸山和也君 実際の運用で少しお聞きしたいんですけれども、二重国籍に関する問題なんですけれども、十五条で、法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍を選択しないものに対して、書面により、国籍の選択すべきことを催告することができる、そしてこれを、催告を受けても選択しなかったら国籍を失うと、こういうふうになっているように思うんですけれども、実際にこういう催告なんてやっているんでしょうか。
○国務大臣(森英介君) 事務方から答えさせますけれども、ちょっとその前に、先ほど二十歳と申し上げたのは、二十歳以下の場合には二十二歳のときに国籍を明らかにすると訂正させていただきます。
○政府参考人(倉吉敬君) 催告をしているのかという御質問でございます。しておりません。
○丸山和也君 だから、実際問題としては、例えばアメリカで生まれた子供さんとか、日本人夫婦の、出生地によってアメリカ国籍を持ったと、それで日本に帰ってきて、そのままにして二つのパスポートを持ってやっていて、成人になっても別に催告も受けないし、そのままずっといっている方もたくさんいるんですが、こういうのはどのように考えたらいいんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 実はその重国籍の問題というのは非常に難しい問題で、いろいろ、例えば自由民主党の司法制度調査会のプロジェクトチームなんかでも非常に議論のされているところでございます。
 様々な御意見があります。これまでも国籍法については、我が国を取り巻く情勢とか、国内のいろんな意見とか、そういうことを振り向きながら必要に応じて改正をしてきたわけでございますけれども、この重国籍の問題については非常に意見が分かれているところでございまして、今後とも、もちろん国際的な動向がどう動いていくかということも注視しなければいけませんが、それと同時に、国民的な議論が深まっていくということを見守っていきたいと、今はそう考えているところでございます。
○丸山和也君 あえてそれを調べて催告もしないというのは、そういうことをすれば事務的手数も増えますし、そういう時代の流れもゆっくり見ていた方がいいという配慮からそういう催告もするようなこともないということなんでしょうか、現実的なとらえ方なんですけれども。
○政府参考人(倉吉敬君) 実は今の下でだれが重国籍者なのかというのをもう把握できないわけでございます。そのような状況の中で、たまたま把握した人に催告をするのがいいのかと。もちろん、催告を受ける側は追い詰められるわけですから、どっちかを選択しなければならない、それが本当にいいのかという問題はございます。いや、そんな生ぬるいことでいいのかとか、いろんな御意見はあるわけですけれども、今のところはそういったもろもろの事情を考えて催告をしないということにしております。
 我が国の国籍法は、基本的に国籍唯一の原則、国籍は一つであるべきだという原則を理念としております。したがって、無国籍及び重国籍の発生はできる限り防止し、解消を図るように努めることとされているわけでありますけれども、国籍選択については、今申しましたように、そういう事情があるとともに、本人のみならず、その親族等関係者の身分関係及び生活等に極めて重大な影響を及ぼすということがございますので、慎重に対処する必要があると考えておりまして、本人の自発的な意思による選択がされるよう制度の周知と啓発に努めているわけでございます。
○丸山和也君 いや、私は決してそれでいいのかと言ってるんじゃなくて、非常に我が日本国も寛大なところがあるなというふうに思ったんですけれども。
 ただ、この重国籍に関しては問題があるという方もあるし、やっぱりまじめな方で、重国籍を認めてくださいという請願も結構来るんですね。それで、多様な文化、異国の文化を共有しながら社会生活を送る、それによってやっぱり共存といいますか、できるんだと。
 特に、日本人で外国の方と結婚されて、向こうの国では重国籍を認めるんだけれども、日本は認めない。それで、どうしても日本国籍を失うとなると、例えば外国人と結婚して子供ができて孫を連れて親に見せたいと、あるいは親の介護のために日本にしばらく長期滞在したいと思っても、外国人扱いされてなかなか非常にそれが困難だとか、こういうことで、そういうグループの方は、どうして日本国籍を失わなきゃならないんだと、これを何とか改正してくれないかという要望もありますし。
 それから、昨今ニュースになっておった、ノーベル賞をもらいましたね、日本人の方。日本人、ノーベル賞だといっても、あれ、実際は国籍はアメリカ、帰化されてアメリカ国籍であれば、もう日本人じゃないんですよね。そうなるとやっぱり、そういう方々も、別に日本の国籍を失いたくはなかったけれども、そういう日本でアメリカの国籍を取ることと日本の国籍が、両方が維持することが難しいとなってやむなく選択された方もおられるんじゃないかと思うんです。
 そうなると、これからの時代というのは、規制する面は厳しく規制し、不正は断固きつい処罰をしなきゃならないんだけど、やっぱりいい方向でのフレキシビリティーというのを持たないと、国としてやっぱり逆に孤立していくんじゃないかという感じ、私するんですよ。
 そういう意味で、私はよく言うんですけど、結構私は国粋主義者だけど偏狭な国粋主義ではないと、国際的に開かれた国粋主義者でありたいと思っているんですけどね。それは、良き日本の文化、伝統を大事にしながら、やはり開かれた国づくりをすべきだと思いますんで、どうか大臣、局長を含めて、この二重国籍問題についてもこれからの課題として研究を続けていただきたいと。我々もいろいろなところで議論を重ねてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。


Return